子どものイップスは「教えすぎ」が原因?成長とともに生まれる心の不一致
こんにちは。佐野市のバースデーカイロプラクティックの篠崎です。
この記事では、熱心な指導によって結果を出してきた子どもが、なぜ成長とともに心の不一致を抱え、イップスを発症することがあるのかを解説します。
子どもが小さい頃からスポーツに取り組み、少しずつ結果を出してくると、親や指導者も「もっと成長してほしい」と熱心に関わるようになります。
フォームを細かく教えたり、失敗しないように助言したり、ときには厳しく指導したりすることもあるでしょう。
実際に、それによって技術が向上し、試合で結果を残してきた子どもも少なくありません。
しかし、小学校高学年、中学生、高校生へと成長するなかで、それまで問題なくできていた動作が突然できなくなることがあります。
投げようとすると腕が固まる、ボールを離せない、ラケットを自然に振れない、試合の特定の場面になると体が思うように動かない。このような状態がイップスです。
子どものイップスには、さまざまな要因が関係しています。そのため、「親の指導が原因」「厳しく育てたからイップスになった」と単純に決めつけることはできません。
一方で、周囲から教えられすぎたことによって、子どもが自分で考え、自分の感覚を表現する機会を失ってきたことが、イップスの一要因になる場合があります。
なぜ、結果を出してきた子どもがイップスになるのか
イップスになった子どもを見て、親や指導者は次のような疑問を抱きます。
- これだけ練習してきたのに、なぜ突然できなくなったのか
- 練習ではできるのに、なぜ試合ではできないのか
- できるときもあるのに、なぜ同じ動作を繰り返せないのか
- 技術が身についていたはずなのに、なぜ動きがおかしくなったのか
単なる技術不足であれば、練習や試合を問わず、同じ動作で比較的一貫して問題が現れると考えられます
ところが、イップスでは、練習ではできるのに試合になるとできない、特定の相手や状況になると体が固まるなど、場面によって症状が大きく変化することがあります。
このような変化は、技術不足や練習不足だけでは十分に説明できません。
当院では、イップスには、特定の競技動作や場面と結びついた脳の誤作動記憶が関係していると考えています。その結果、体が固まる、勝手に動く、感覚が分からなくなるなどの症状が現れます。
結果の背景にある親や指導者の熱心な関わり
小さい頃から結果を出してきた子どもの背景には、親や指導者による熱心な関わりがあります。
- 練習に付き添ってきた
- 技術を細かく教えてきた
- 試合の反省点を一緒に考えてきた
- 生活や練習のスケジュールを管理してきた
- 失敗しないように先回りして助言してきた
- 競技を続けられる環境を整えてきた
そこには、「子どもに上達してほしい」「可能性を伸ばしてあげたい」という親や指導者の愛情があります。
厳しく指導したことで技術が身についたことも、細かく支えてきたことで結果につながったことも事実でしょう。
そのため、結果が出ている間は、親も指導者も子どもも、現在の関わり方を変える必要性を感じません。
結果が出ている間は「教えすぎ」に気づきにくい
大人から言われた通りに練習して結果が出ると、親や指導者は「この教え方で間違っていない」と考えます。
子どもも、周囲の指示に従えば褒められ、試合で結果が出るため、自分で考えるよりも、大人が示す正解に合わせるようになります。
すると、少しずつ次のような関係がつくられていきます。
- 自分がどう感じたかより、何を直すべきかを優先する
- 自分がどうしたいかより、何を求められているかを考える
- 自分の判断より、親や指導者の判断を優先する
- 失敗から自分で学ぶ前に、大人から答えを教えられる
- 自分の感覚と違っても、指示された方法を続ける
こうした状態が続くと、競技をしているのは子ども本人であっても、競技の主体は周囲の大人になっていきます。
子どもは結果を出していても、「自分で考えて成功した」という感覚を持ちにくくなり、何か問題が起きるたびに周囲から正解を教えてもらわなければ動けなくなることがあります。
厳しい指導と過保護に共通する問題
厳しい指導と過保護な関わりは、表面的には正反対に見えます。
厳しい指導では、子どもに強く指示し、できるまで繰り返し練習させます。一方、過保護な関わりでは、失敗しないように大人が先回りし、困らないように細かく支えます。
しかし、どちらも行き過ぎると、子どもから次のような経験を奪ってしまう可能性があります。
- 自分で考える
- 自分で選択する
- 失敗して学ぶ
- 自分の感覚を言葉にする
- 周囲の大人と異なる意見を持つ
- 自分の結果を自分で受け止める
問題は、厳しく指導することや、優しく支えること自体ではありません。
大切なのは、子ども自身が考え、選択する余地が残されているか、そして子どもが競技の主体になれているかということです。
成長すると「求められる自分」と「本来の自分」がずれてくる
幼い頃の子どもにとって、親や指導者の言葉は大きな影響力を持ちます。
「こうしなさい」と言われれば、それを正解として受け入れます。自分の感覚や考えを持っていたとしても、まだ十分に言葉で表現できないこともあります。
しかし、小学校高学年から中学生、高校生へと成長すると、思考力が発達し、自分なりの考え方や価値観が育ってきます。
それに伴い、子どもの中には次のような気持ちが生まれてくることがあります。
- 本当は違う方法を試してみたい
- 自分でプレーを判断したい
- 失敗してもすぐに修正されたくない
- 親や指導者に反対意見を言いたい
- 結果だけでなく競技を楽しみたい
- 期待されている役割から少し離れたい
- 自分がどうしたいのかを考えたい
これは、反抗的になったからではありません。
子どもが自分の考えを持ち、一人の人間として成長しているからこそ生まれる自然な変化です。
ところが、子どもの成長に対して、周囲の関わり方が幼い頃のまま変わらないことがあります。
自分の意思が芽生えているのに、「言われた通りにしなければならない」「期待に応えなければならない」という関係が続くと、子どもの中に不一致が生じます。
言葉にできない心の不一致が体の反応として現れるのがイップス
子ども自身が、親や指導者に対する違和感を明確に自覚しているとは限りません。
意識では、次のように考えているかもしれません。
- 自分のために教えてくれている
- 期待に応えたい
- もっと上手になりたい
- 親や指導者をがっかりさせたくない
一方で、心の奥には、言葉にできていない別の気持ちが隠れていることがあります。
- 本当は自分で決めたい
- これ以上、細かく指示されたくない
- 失敗しても責められたくない
- 自分の気持ちを分かってほしい
- 結果を出し続けることに疲れている
「期待に応えたい自分」と「自分で決めたい自分」が、子どもの中に同時に存在している状態です。
しかし、どちらか一方を選ぶことができず、その気持ちを親や指導者にも伝えられないと、子どもの中で心の信号が混線していきます。
その不一致が特定の競技動作や試合場面と結びつくことで、意識では動こうとしているのに体が固まる、動作が止まる、普段とは異なる動きになるなどのイップス症状につながる場合があります。
言葉で「こうしたい」と伝えられない心の不一致が、結果として「体が動かない」という反応に関係している場合もあります。
イップスは親や指導者だけのせいではありません
ここで注意していただきたいのは、子どものイップスを、親や指導者の責任と言いたいわけではありません。
同じ言葉をかけられても、子どもによって受け取り方は異なります。
ある子どもは「期待されている」と前向きに受け止めても、別の子どもは「失敗してはいけない」と受け止めるかもしれません。
イップスには、周囲の指導だけでなく、次のような要因も複雑に関係します。
- 失敗した経験
- 試合の重要性
- チーム内の人間関係
- 周囲からの評価
- 競技に対する責任感
- 本人が自分に課しているルール
- 失敗や指導に対する本人の解釈
そのため、「厳しく指導したからイップスになった」「あの言葉が原因だった」と、一つの原因に決めつけることは適切ではありません。
重要なのは、親や指導者が何を言ったかだけではなく、子どもがその言葉や関わりをどのように受け止め、自分の中にどのようなルールを作ったかです。
ただし、周囲から教えられ続けたことが、子どもの自主性や思考力を育てるうえでの障壁となり、心の不一致を生み出す一要因になることはあります。
イップスになった子どもに、さらに正解を教えない
子どもがイップスになると、親や指導者は早く改善させようとして、さらに細かく指導したくなります。
しかし、教えられすぎたことによって自分の感覚を見失っている子どもに、さらに正解を与え続けると、本人はますます自分で考えられなくなってしまいます。
イップスになった子どもに必要なのは、すぐに答えを教えることではなく、本人が自分の感覚や考えを確認できる時間です。
- すぐにフォームを修正しない
- 親が答えを提示する前に、本人の考えを聞く
- 子どもの話を途中で評価しない
- 失敗しても、自分で振り返る時間を与える
- 親や指導者と違う考えを言ってもよいと伝える
- 競技以外の子どもの考えや生活も尊重する
「どうしてできなかったの?」と原因を問い詰めるのではなく、「そのとき、どのように感じていた?」と本人の感覚を聞いてみてください。
すぐに答えが返ってこなくても問題ありません。自分の気持ちを考えること自体が、子どもにとって必要な経験になります。
イップスになった選手への具体的な接し方については、以下の記事でも詳しく解説しています。
必要なのは、子どもが競技の主体に戻ること
イップスの改善は、止まっていた動作ができるようになることだけではありません。
子どもが再び競技の主体に戻り、自分の感覚を信頼できるようになることも大切です。
- 自分が何を感じているのかに気づく
- 自分はどうしたいのかを考える
- 周囲と異なる意見を表現する
- 自分で選択する
- 失敗を自分の経験として受け止める
- 必要なときには周囲へ助けを求める
これらは、スポーツで結果を出すためだけに必要な力ではありません。
子どもが自分の人生を生き、一人の大人へと成長していくうえでも必要な力です。
これまで親や指導者が支えてきたことをすべてやめる必要はありません。子どもの成長に合わせて、答えを教える関わりから、本人が答えを見つけられるように支える関わりへ変えていくことが大切です。
当院では、本人の中にある不一致を一緒に整理します
バースデーカイロプラクティックでは、親や指導者を批判したり、子どもに反抗するよう促したりすることはありません。
また、子どもの性格を「メンタルが弱い」「考え方が悪い」と評価することもありません。
当院では、特定の競技場面に対して、本人の無意識にどのような心の混線が生じているのかを確認します。そして、本人がその不一致に気づき、自分の感覚や考えを整理できるようにサポートします。
アクティベータメソッドと心身条件反射療法(PCRT)を用いて、身体機能に関係する神経系を調整するとともに、特定の競技場面と結びついた心と体の誤作動信号を整えていきます。
当院のイップスに対する考え方や施術については、以下のページをご覧ください。
まとめ
本記事は、イップスになった子どもに対する、これまでの親や指導者の関わり方を否定するものではありません。
子どものイップスに関係する可能性がある、一つの要因についてご紹介したものです。
これまでの指導によって、子どもが技術を身につけ、結果を出してきたことも事実です。
親や指導者が一生懸命に支えてきたことを、すべて否定する必要はありません。
しかし、子どもは成長します。
大人が正解を与える時期から、子ども自身が考え、選択し、失敗しながら成長する時期へと移っていきます。
その変化に周囲の関わり方が追いつかないと、「求められる自分」と「本来の自分」との間に不一致が生まれることがあります。
子どものイップスは、その不一致に気づき、これまでの親子関係や指導方法を見直すためのサインになっているのかもしれません。
今、必要なのは、さらに正しい動きを教えることではなく、子どもが自分で感じ、考え、選択できる環境を支えるための、子どもへの信頼なのかもしれません。
イップスに悩む子どもをお持ちの保護者や、指導方法に悩んでいる指導者の方は、LINEからご相談ください。
























